【考察】桃田賢斗vs西本拳太〈2018年全日本総合バドミントン男子シングルス決勝〉

つい先日のマレーシアマスターズ1回戦で西本選手が桃田選手をファイナルゲームで破ったばかりで(個人的にはかなり衝撃!)、だいぶ今更ではあるが昨年末の全日本総合男子シングルス決勝戦の桃田選手と西本選手の試合について、私なりに考察してみた。

バドミントンは派手なスマッシュやギリギリのレシーブがフォーカスされがちですが、実は作戦の組み立てだったり、相手の駆け引きの方がかなり重要だったりするので、その辺をまとめてみた。

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2018年バドミントン全日本総合男子シングルスの決勝戦の試合結果

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https://www.badspi.jp/wp-content/uploads/2018/12/489AQ3I3817a.jpg

ファイナルゲームまでもつれた60分を超える激闘を制したのは、24歳で現在バドミントン男子シングルスで世界ランキング1位(2018年12月時点)の桃田賢斗選手

 

私は佐藤翔治選手が当時シングルスの日本チャンピオンだった2006年頃から毎年全日本総合は見ているが、今年が私の知る限り(日本バドミントンのレベルは年々上がってきているので恐らく歴代で)最高レベルの試合だったかと

 

国際大会で順調に結果を出しながらも、2017年の全日本総合では本来の実力を発揮しきれず悔しい負けを経験。

世界ランキング1位という肩書を引っさげ、今年こそは何としても日本の絶対エースとしての返り咲きを全日本総合という大舞台で果たしたい桃田選手


海外実績的には桃田選手に及ばないものの、桃田選手と同世代のライバルとして、自分の存在感を示していきたい西本選手

 

の両者が激突した非常に熱い試合だった。

普段から一緒に練習する機会が多いことからお互いの手の内を把握しており、なかなか互いのショットが決まらない、ハイレベルなラリーの応酬となり、非常に見応えがあった。素晴らしい試合を見せてくれた両者に感謝したい

 

考察

今回は試合をする中での両選手の考えや狙いを個人的に考察してみた。

あくまで一個人としての考察なので、

本当の思惑は本人たちのみぞ知るところだし、「こういった解釈もある」といったご意見も勿論あると思います。そのあたりだけご了承いただきたい。

 

勝戦における両選手の思惑


〈第1ゲーム〉

決勝の大舞台ということもあり、独特の雰囲気(両選手は比較的リラックスしているようには見えたが)の中で、いかに最初に主導権を握ることができるかが鍵になってくる。


・西本選手の狙い(予想)
2回戦、準々決勝と強打で相手を圧倒して勝ち上がってきた桃田選手に対し、自らも攻めつつ、桃田選手の強打をしっかりレシーブしていきたい


・桃田選手の狙い(予想)
2回戦、準々決勝とは若干変えて、強打だけでなく、強打と見せかけたカットやクリアーで相手を揺さぶってペースを掴んでいきたい

※桃田選手は準決勝は常山幹太選手の棄権により不戦勝

 

★ 1ゲーム目の結果
桃田選手の狙いが功を奏したのか、序盤で流れを掴むと、圧倒的なショットの精度とバリエーションで終始ラリーの主導権を握り、1ゲーム目を先取


〈第2ゲーム〉

第1ゲームの流れを振り返り、桃田選手はいかに第1ゲームの流れを継続できるか、西本選手はいかに第1ゲームの流れを挽回してくるかが見どころになってくる。


・西本選手の狙い(予想)
桃田選手がスピードをあげて一気に2ゲームで決めに来る可能性があるので、しっかり粘って我慢して自分のペースを何とかつかもう


・桃田選手の狙い(予想)
1セット目が流れよく先取できたので、この勢いのまま、スピードをあげて序盤で突き放し、一気に2セット目も奪って優勝を決めたい

★ 第2ゲームの結果
桃田選手の精度の高いショットに粘り強く食らいつき、なんとか西本選手が2セット目を21-18で奪い返す。桃田選手は後ろに早く下がって強打によるプレッシャーをかけたい気持ちが強かったのか、ネット前がやや空いてしまった印象。そこを西本選手は見逃さなかった。2ゲーム目の終盤については、不運なチャレンジ失敗もあり、桃田選手は途中からファイナルゲームに気持ちを切り替えつつあった印象。ファイナルゲームでしっかり自分のプレイを出すことができれば西本選手を凌ぐことができるという、自信の現れでもあったのではなかろうか。


〈ファイナルゲーム〉

見ている方が疲れるほどの互いの神経をすり減らした高レベルなラリーの応酬だった第2ゲームの後、いかにスピード・パワー・集中力を維持し、強い気持ちをもって臨めるかが雌雄を分けたのではと推察する。


・西本選手の狙い(予想)
1.2ゲーム目の桃田選手のスピードとショットの精度スタミナ的にも厳しくなっているが、何とか粘ってまた自分のペースにもっていきたい。序盤から攻めの姿勢を見せることでプレッシャーをかけて流れをつかみたい


・桃田選手の狙い(予想)
強打で安易に決めに行くのではなく、スピードとショットの精度を高めながらしっかりラリーをして相手を追い込んでいきたい

 

★ ファイナルゲームの結果

序盤から桃田選手のスピードとショットの精度に苦戦を強いられる西本選手。時折甘い球が来たときには欠かさず強打を決める西本選手でしたが、力及ばす。結果的に21-11で桃田選手が3年ぶりとなる頂点に立ちました。

各選手の素晴らしいと感じた点

〈西本選手の素晴らしいと感じた点〉
・少しでも甘いロブが入ると見逃さず、角度を付けてラインギリギリにスマッシュを叩き込む決定力
・追い込まれて体制を崩された状態でも、決して簡単には甘い球を出さないラリー力と忍耐力


〈桃田選手の素晴らしかった点〉

・ネット前、フォア奥、ラウンド奥、ハイバックなどあらゆる体勢・ポジションから繰り出される磨き抜かれたショットの数々

・ファイナル終盤でも衰えないスピードとショットの精度を維持し続けるスタミナと集中力の高さ
・しぶとく粘り続ける相手を前にしても、決め急がず我慢し続ける忍耐力

 

実際には試合の動画を見てもらうのが1番てっとり早いと思うのでyoutubeへのリンクを張っておきます。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

 

youtu.be

 

 以下はブログを作成するにあたって、試合の流れやラリーの展開を雑多にまとめたメモ。参考までに。

おまけ

〈第1ゲーム〉

 ・両選手とも緊張した雰囲気はあまり感じない。

 ・序盤、西本選手は強打による攻めの姿勢伺えるが、桃田選手は桃田選手はスマッシュで決めれそうな球であっても、クリアやカットをうまく織り交ぜ相手の逆をついてうまく点を取っている。

 ・それによって西本選手が自分のペースをうまくつかめず、桃田選手に一気に試合の流れが傾いた印象。

 

 ・西本選手も負けじと攻めてプレッシャーをかけようとするが、カウンターくらう。(スコア:5-2

 

 ・なかなか自分のペースにもっていけない西本選手。(スコア:6-2

 

 ・桃田選手のスマッシュをすばらしいクロスレシーブで切り返す西本選手(恐らくある程度読んでたのかな)。

 

・桃田選手の打点が高い、しっかり体が入ったショット打っている。(スコア:8-3

 

・西本選手のフォア奥から桃田選手のバックに向かう高い打点でのクロススマッシュの決定率が高い。桃田選手もある程度クロスへのショットを予測してはいるようだが、うまく返球できていない印象。

 

 ・桃田選手の精密な配球になんとかついていくも、我慢しきれない西本選手。(スコア:10-6

 

 ・桃田選手のネット前のフェイントの技術が非常に高く、なかなか西本選手の流れにもっていけない。

 

〈第2ゲーム〉

 ・最初からスピードをあげて臨む桃田選手。積極的に打って出る。(スコア:0-1 1-1

 

・一気に突き放そうとするが、後ろで打ちたい気持ちが強いのが、ネット前を狙われる。(スコア:2-1

 

★西本選手相手をよくみているな。これがまさにラリーの駆け引き。

 

 ・桃田選手スピードをあげて西本選手にプレッシプレッシャーをかけるが、西本選手のたまの精度(特に隅をつくクリアー)が高く、桃田選手のミスにつながる。

 

 ・お互にスピードをあげたは早い展開だが、安牌にいかず、相手の狙いを外す西本選手。

 

 ・たまに甘い球がいくと見逃さない桃田選手。(スコア:5-8

 

 ・早い展開で攻撃の手を緩めない桃田選手。(スコア:9-8

 

 ・早い動きとタッチで相手にプレッシャーをかけようとして、やや力が入っている桃田選手からミスが出る。それによってペースをつかみきれていない印象。西本選手との点差を離せない。(スコア:10-10

 

 ・粘りと我慢で桃田選手のミスを引き出す西本選手(スコア:10-11

 

 ・西本選手の粘りが光るラリー。ラリーを制したのは桃田選手だったが、相当揺さぶって揺さぶってのようやくの1点だったので、「簡単に点が取れない」という印象を与えられたのでは。(スコア:12-12

それが13-12のラリーにつながっているような、、

 

・西本選手の動きを見て直前でシャトルのコースを変えることで西本選手の逆を付き点をとった桃田選手。さすがの西本選手も桃田選手からの揺さぶりによる足への疲労が蓄積してきている印象。(スコア:13-13

 

・チャレンジ失敗でやや桃田選手の集中力が下がった印象。ここぞとばかりに畳み掛ける西本選手。桃田選手も気持ちを切り替えきれていない印象。

 

・再度チャレンジのミスで西本選手が執念で2セット目を奪い返す。

 

・桃田選手も2ゲーム目の終盤のどこかで「切り替えてファイナルセットできっちり決めよう」という思考を抱いていたのではなかろうか。

 

〈ファイナルゲーム〉

 ・スピードも2ゲーム目の前半に比べればゆったりしている印象。ラリー勝負で西本選手を消耗させようという狙いが感じられる。

 

 ・出だし早いが、そこまでトップスピードではない印象。

 

 ・西本選手はチャンスがあれば積極的に打っていく姿勢。

 

 ・一方桃田選手は相手の動きをよく見ている。

 

 ・後ろで強打して攻めたい気持ちが強いとネット前があくので、前も意識して押さえつつ我慢するのが大事そう。

 

 ・桃田選手はクロスカットで西本選手の足元を狙い点を決める。(スコア:4-2

 

 ・桃田選手粘りのレシーブ、西本選手の足が鈍くなり、アタックログを見逃す。(スコア:5-2

 

 ・西本選手も攻めの姿勢を見せるが、桃田選手が我慢、またしてもフォア奥からのクロスカットに西本選手足が出ず。(スコア:7-2

 

 ・フォア奥から何を打つか一瞬迷った桃田選手がクロスネットをネットにかける。 (スコア:7-3

 

 ・前後の揺さぶりに我慢できず、西本選手がラウンド奥からのショットをサイドアウト。(スコア:8-3

 

 

 ・桃田選手のショットは決めに行くというより、パワーを押さえてコースギリギリを狙いに行っている印象。西本選手は我慢できず甘い球を出す。(スコア:9-3

 

 ・ラリーを長引かせたくないのか、序盤から攻めの気配を見せる西本選手。桃田選手からやや甘い球がくるもスマッシュをネットにかけてしまう。疲れの影響か、チャンス珠への反応が若干遅れた印象。(スコア:10-3

 

 ・桃田選手のサイドラインギリギリのクリアを西本選手が見逃し。(スコア:11-3

 

 ・風向きが変わった影響なのかバックラインギリギリのロブを桃田選手がジャッジミス。(スコア:11-4

 

 ・フォア奥からのストレートカットを桃田選手がネットにかける。(スコア:11-5

 

 ・桃田選手のショットの精度は高いが、さらに精度の高いヘアピンで返す西本選手。(スコア:6-11

 

 ・桃田選手がスピードをあげた印象、ヘアピンへの反応が遅れた西本選手がネットにかける。インターバル以降西本選手に傾いてた流れを断ち切る可能用に雄叫びをあげる桃田選手。(スコア:12-6

 

 ・ラリーの主導権は桃田選手にあったが、ほんの少し攻め急いでしまいヘアピンをネットにかけてしまう。(スコア:7-12

 

 ・甘い球を見逃さない桃田選手、強烈なスマッシュからのプッシュを叩き込む。

(スコア: 7-13

 

 ・体力的にも厳しい状況にも見えるが、やや甘くなったロブをきっちりサイドラインギリギリに叩き込む西本選手の粘り強さはさすがの一言。(スコア:8-13

 

 ・桃田選手のスピードにややプレッシャーを感じたのか、西本選手のサイドアウト。(スコア:8-14

 

 ・桃田選手のショットの精度になんとかついていくも、最後振り切られる西本選手。西本選手も甘い球を打っている訳ではないが、桃田選手のスピードとショットの精度が落ちない。(スコア:8-15

 

 ・甘い球は見逃さない西本選手。桃田選手のハイバックからのストレートクリアをラウンド奥からクロスのサイドラインギリギリに叩き込む。

(ラリーの序盤であればショットの精度落ちない??)(スコア:9-15

 

 ・スピードをあげながら精密機械のようなショットで西本選手を翻弄する桃田選手。

(スコア: 9-16

 

 ・甘い球は見逃さない西本選手。やや浅くなった桃田選手のフォア奥からのクロスクリアに対し、角度のあるストレートスマッシュをサイドラインギリギリに叩き込む。

(桃田選手の奥への球が甘くなったのが得点パターンとして多そう)(スコア:10-16

 

 ・桃田選手の甘くなったロブをカウンターで叩き返す西本選手。(スコア:11-16

 

 ・西本選手の攻撃を冷静にかわす桃田選手。バック奥へのアタックロブをダイビングで拾おうとした西本選手が、着地時に指を負傷。スコア:11-17

 

 ・スピードとショットの精度を緩めない桃田選手。やはり一発で狙いにいくというより、我慢しながら相手をずっと追い詰める覚悟のラリーのように感じる。(スコア:11-18

 

★時たまに出る桃田選手の甘いショットを見逃さない西本選手。

 

 ・甘い球に反応良くスマッシュ打つもサイドアウトしてしまう西本選手。(スコア:11-19

 

 ・桃田選手のスピードとプレッシャーに押され西本選手のヘアピンがネットを超えず。(スコア:11-20

 

 ・甘い球には見えなかったがサーブレシーブの西本選手の桃田選手のフォア奥へのをロブを、桃田選手が渾身のクロススマッシ。

ここまで全力で決めにはいかず我慢していた桃田選手が、最後の最後で全力で狙いにいった印象。

スマッシュを打った後、即座にクロスに走り出していないので、打った瞬間に決まるイメージをもてるくらいの良いショットだったものと推察)(スコア:11-21

 

今後時間があれば、

・マレーシアマスターズでの桃田選手VS西本選手

・2018年のスーパーシリーズファイナルでの桃田選手VS石宇奇選手

の試合なんかも考察していきたいな。。